文書作成日:2024/12/03
年末や年度末に向けて、業務が繁忙となり、「時間外労働・休日労働に関する協定」(以下、「36協定」という)に定める限度時間を超えて時間外労働を行わざるを得ないケースが発生しがちです。そこで今回は、そうした場合に求められる手続きや注意点をとり上げます。
[1]特別条項の有無と手続きの確認
そもそも従業員に36協定に定める限度時間(月45時間など)を超えて時間外労働をさせるためには、36協定に特別条項を設ける必要があります。よってまずは締結している36協定に特別条項を設けられているかの確認をします。特別条項には、限度時間を超えて労働をさせる際の手続きが定められているため、その手続きを取った上で時間外労働を命じることとなります。例えば、「過半数代表者への申し入れ」とされている場合には、事前に会社が従業員の過半数代表者へ限度時間を超えた時間外労働を命じる旨を書面等で申し入れ、その記録を残しておくことが求められます。
[2]特別条項を適用する際の注意点
実際に特別条項を適用し、時間外労働を命じる際には、「1箇月(時間外労働及び休日労働を合算した時間数。100時時間未満に限る。)」の項目で定めた以下の2点について特に注意が必要です。
例えば限度時間を超えて労働させることができる回数を6回と定めている場合、36協定で定めた1年のうち6回(6ヶ月)までしか特別条項を適用することができません。そのため、従業員ごとに適用した回数をカウントし、6回以下となるように管理が必要です。
また、この特別条項を設ける場合の前提条件として、法令で上回ることができない労働時間数等の基準が設けられています。具体的には、以下の1から4のすべてを満たす必要があります。
そのため、1ヶ月の時間外労働時間数の上限を90時間と協定しているケースにおいて、その月の時間外労働時間数が90時間で協定の範囲に収まっていたとしても、上記3のとおり2〜6ヶ月平均で月80時間以内という基準を満たすためには、その翌月は70時間以内に収める必要があります。単月の管理のみではなく、複数月の時間数の管理も必要になります。
また、特別条項を適用した従業員に対して、会社は36協定に定めた従業員の健康および福祉を確保する措置を実施し、この実施状況に関する記録を36協定の有効期間中および有効期間の満了後3年間保存する必要があります。実施した際には必ず記録を残しておきましょう。
■参考リンク
厚生労働省「時間外労働の上限規制」
厚生労働省「時間外労働の上限規制わかりやすい解説」
※文書作成日時点での法令に基づく内容となっております。