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作成日:2024/01/26
無期転換時の賃金減額無効 根拠規定が存在せず 東京地裁  【労働新聞社】

有期労働契約から無期労働契約に転換した際、賃金の減額の是非が争われた事案で、東京地裁は、以下の様に示しました。

 政府事業を請け負う一般社団法人で通訳・翻訳者として働く労働者が無期転換時の労働条件変更を不服とした裁判で、東京地方裁判所(中井裕美裁判官)は配置転換を適法と認めた一方で、賃金減額は無効と判断した。減額の根拠となる就業規則や賃金規程が存在しないとして、月36万円の差額賃金の支払いを命じている。同法人は、労働者が出入国時の新型コロナウイルスの防疫措置を理由に、海外への長期出張を拒否したため、無期転換と同時に出張業務のない部署へ配置転換し、賃金を引き下げていた。業務内容の変更に応じて賃金額を定めていると主張したが、認められなかった。

 同法人は日本と中国が締結した覚書に基づく事業を内閣府から請け負っている。労働者は平成13年に同法人の前身となる法人に入社し、期間の定めのある労働契約を更新してきた。令和3年4月には、業務内容を通訳・翻訳、賃金を日給3万円とする有期労働契約を締結したうえで、日中両政府の新型コロナの防疫措置に従い出張業務に従事する内容の誓約書を交わした。

 労働者は同年7月23日〜10月5日までの間、中国に出張した。その際、同行者が新型コロナに感染し、7週間の隔離措置を受けた。帰国後、家族の健康状態などを理由に、長期間の隔離を伴う中国出張業務は難しいとして、所属長に来年度は出張業務に従事できないと伝えた。そのうえで、4年2月9日には無期労働契約への転換を申し込んでいる。

 同法人は4年度も中国出張業務が予定されているとして、誓約書の提出や、出張辞退の意思確認書の提出を複数回求めたが、労働者はどちらも提出しなかった。同法人は、中国出張業務は不可能と判断して、同年3月28日、無期転換と同時に出張業務のない部署へ配置転換し、業務内容を中国出張なしの翻訳、賃金を日額3万円から月給25万7500円に変更することを通知した。労働者は労働条件変更を不服とする裁判を起こした。

 同法人の契約社員就業規則には、無期転換した職員には法人の就業規則を適用する旨の規定があった。就業規則と賃金規程は職員の賃金について、「職務内容、技能、勤務成績、年齢等を考慮して各人別に決定する」と定めていた。

 同地裁は配転命令を適法とした一方、賃金減額は無効と判断した。減額の根拠となる就業規則や賃金規程がないとしている。同法人に対して、差額賃金として月36万円ほどの支払いを命じた。

 同法人は賃金減額の根拠として、職員の業務内容に応じて賃金額を定めており、無期転換時に労働者に対し、異動や業務内容の変更があった場合には、3年度の賃金を維持しないと説明していたと主張した。同地裁は、無期転換申込みによって、契約期間を除いて3年度の有期雇用契約と同一の労働条件の契約が成立していると指摘。賃金規程の「各人別に決定する」との文言は、一度決まった賃金額を、異動や業務内容の変更によって変更することまで含むとは解釈できないとして、主張を認めなかった。

                                                            2024.01.25【労働新聞 ニュース】


労働新聞社さんの上記記事以外、今は情報がないので何とも言えませんが、
⑴元々海外出張が予定されていた有期労働契約において、その海外出張が労働者側の事情によりできないことを理由に行った配置転換は有効
⑵有期労働契約かや無期労働契約への無期転換の際、労働条件が変更されることについてその根拠を欠くとして賃金減額は無効
ということにおいて、⑵で特に中止すべきは、無期転換後の就業規則や賃金規程において、東京地裁は「賃金規程の「各人別に決定する」との文言は、一度決まった賃金額を、異動や業務内容の変更によって変更することまで含むとは解釈できない」という判示内容ですね。
これは実務においても考慮すべきと考えます。
東京地裁や大阪地裁は、労働専門部がありますので、下級審判決とは言えど、それなりの影響力があると考えております。

当職は、こういった裁判例も踏まえて就業規則の条文づくりを行っております。
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